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愛媛県・市町全職員DX意識調査報告(2023年度)

こんにちは!
愛媛県・市町DX推進会議事務局です。

この記事では、2023年度に推進会議が初めて実施した「愛媛県・市町全職員DX意識調査」について、その概要や調査結果のポイントをピックアップしてご紹介します。


愛媛県・市町全職員DX意識調査とは

愛媛県・市町全職員DX意識調査は、自治体職員のDXに関する意識やスキルを定量的に把握することで、各団体のDX推進やデジタル人材育成などの施策の立案や効果検証に役立てることを目的に、2023年度に初めて推進会議が実施したものです。

実施主体:
愛媛県・市町DX推進会議
調査対象:
愛媛県・市町に所属する正規雇用職員:33,623人
※再任用・任期付き職員を含む
※職員数は令和4年度総務省「地方公共団体定員管理調査」に基づき算出
回答期間:
2023年7月24日(月)~8月10日(木)
調査項目:
全69問
※経済産業省・IPAのDXリテラシー標準に基づく
回答方法:
Webフォーム(LoGoフォームで回答を収集)
回答者数:
9,114人(回答率:27.1%)

県・市・町が全ての職員を対象に同じタイミングで調査することで、以下のような実態把握と分析ができるようになっています。

  • 同一組織内の職員の属性による差 

  • 自治体間で比較した場合の組織ごとの特徴 

  • (次年度以降の調査の継続を前提に)経時的な変化

設問設計の方法

経済産業省所管の独立行政法人・IPAが公開する「DXリテラシー標準(デジタルスキル標準v1.0)」(2022 年12月版)をベースに、愛媛県独自の設問を追加する形で設計しました。

※主設計者:下山紗代子氏(愛媛県・市町DX推進支援専門官)
※設計協力・レビュー:愛媛県内市町の有志職員

DXリテラシー標準とは、全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準として、一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることをねらいとしています。(出典:IPA DXリテラシー標準(DSS-L)概要

調査概要と速報値について報告する下山専門官(2023年8月)

DXリテラシー標準に基づく設問(54問)は4つの分野で構成し、それぞれ次のような定義で質問を設定しています。
   ※回答はすべて以下4つの選択肢からの単一選択式としました。
    1.  当てはまる
    2.  あまり当てはまらない
    3.  少し当てはまる
    4.  当てはまる


【マインド・スタンス】15問
=社会変化の中で新たな価値を生み出すマインド・スタンスを知り、自身の行動を振り返ることができる
質問例:業務のやり方を従来とは違う方法に変えようと取り組んでいる

【Why(DXの背景)】6問
=人々が重視する価値や社会・経済の変化を知っており、DXの重要性を理解している
質問例:「DX」とは何か自分の言葉で説明できる

【What(DXで活用されるデータ・技術)】20問
データやデジタル技術に関する最新の情報を知り、発展の背景への知識を深めている
質問例:データ分析結果に基づく判断・意思決定ができる

【How(データ・技術の利活用)】13問
データ・デジタル技術の活用事例を理解し、実現のために必要な基本ツールを実際の業務で利用できる
質問例:所属組織のセキュリティの方針を理解している

このほか、DXリテラシー標準とは関係なく、愛媛県独自で作成する項目では次のような質問(6問)を設定しました。

・2021年3月25日に「愛媛県・市町DX協働宣言」として、県と市町が協働してデジタル技術を効果的・積極的に活用し、DXに取り組む宣言が実施されていることをご存知でしたか?
・今の自分にはリスキリング(新しい知識やスキルを学ぶこと)が必要だと感じていますか?
・今の自分に必要な知識やスキルを学ぶための時間を確保できていますか?
・今後どのような知識やスキルを習得したいですか?
・IPAが実施する情報処理技術者の資格を持っていれば選択してください
・DXの推進に関するご意見・ご質問などがあれば自由にご入力ください。

残りの質問(9問)は、自治体名・職種・職位・年代・性別といった回答者の属性を問いました。

調査項目の一覧

実際に使用した調査項目の一覧は、愛媛県オープンデータカタログサイトにて公開していますので、こちらをご覧ください。
愛媛県・市町DX意識調査_設問一覧 - 愛媛県オープンデータ (pref.ehime.jp)

調査結果

調査結果のデータはビジュアル分析ツール「Tableau」へと接続し、各市町のDX推進担当部署に共有しています。

ご関心のある方は各市町の担当窓口までお問い合わせください(個別市町の結果はご提供できません)。

調査結果を接続したTableauのダッシュボード(一部)

なお、この調査は他の自治体との相対的な特徴の把握や、仮説・事業効果の検証などに活用していただくためのものです。
自治体・属性ごとの結果は優劣を示すものではありませんので、ご承知おきいただけたらと思います。

***

調査結果のデータは下山専門官が主催したBIツール勉強会で活用し、ツールの使い方を学びながら分析に挑戦しました。

次項では、全体結果から見えてきた2つの分析をご紹介します(あくまで事務局の担当者による分析です!)。

結果を分析するためのBIツール勉強会(2023年10月)

①スコア平均値の比較

分析の一つ目は、全体の結果概要として、傾向の見えやすいスコア平均値(※)の比較を3つの切り口からご紹介します。

(※)設問1~54の回答をスコア化(当てはまる:4点/すこし当てはまる:3点/あまり当てはまらない:2点/当てはまらない:1点)して平均値を算出したものです。

1. 職位別スコア平均値

DXリテラシー標準に基づく4つの分野すべてにおいて、それぞれのスコア平均値は部局長級以上が最も高く、次いで課長級が高い傾向にあります。 

2. 年代別スコア平均値 

年代別に見ると、30代を中心に20代~40代でスコア平均値が高くなる傾向があります。 

年齢に沿ってスコアが伸びているわけではないことから、職位別の結果と合わせて考えると、各年代の中でも職位が高い人物ほどDXリテラシーを有する傾向にあると推測されます。

3. 自治体別の分布

自治体別の分布では、4つの分野のうち「マインド・スタンス」において最もばらつきが少なく、「Why(DXの背景)」で最大となりました。

「Why(DXの背景)」のばらつきが最大となった要因として、設問21の「テレワークの実施状況」で特に自治体間の差が大きく、平均値に影響したと考えられます。 

また、「What(DX で活用されるデータ・技術)」のスコアは相対的に低い結果となりました。AI活用やIT分野の知識が求められる設問だったことが理由として考えられます。

②リスキリングについて

分析の二つ目は、リスキリングについてです。

設問56の「リスキリングが必要と感じるか」では、93.3%の職員が「必要性を感じている」と答え、若い世代ほど割合が高くなる結果となりました。

一方、設問57の「学習の時間が確保できているか」では、「できている」との回答が16.7%にとどまり、特に課長補佐級と係長級、30代と40代という中堅層で「できていない」という割合が多くなりました。

設問58「どのような知識やスキルを習得したいか」については、回答に記載された単語の出現頻度などを可視化しました。
ユーザーローカル テキストマイニングツールによる分析

単語の出現頻度の可視化
関連して出現しやすい単語を可視化

DXに関する調査であったことから、「OfficeソフトやAI(ChatGPT)などのツールを業務に活用したい」という意見が多いように見受けられます。

特徴的な単語の出現頻度(抜粋)
Excel:331 件/AI:171 件/使う・使いこなす:121 件
データ:134 件/プログラミング:107 件/ChatGPT:89 件/Word:87 件

さいごに

設問の設計や結果分析をご担当いただいた下山専門官からは、次のようなコメントをいただいています。

下山専門官:
今回の調査は、私が市町のDX担当の皆さんからのご相談を伺っていた中で、「庁内でスキルを持っている人がどのくらいいるか知りたい」「現状把握をした上で人材育成を進めたい」といった声が挙がっていたのを受け、推進会議に提案をして進めたものです。

県と域内の基礎自治体全ての団体で一斉にDXの意識調査を実施するというのは前例の無い取り組みでしたが、愛媛県と20の市町ではこれまでの取り組みにおいてDXの認識共有と機運醸成ができていた状態であったため、「他の地域ではできないことがここではきっとできる」と確信して進めました。
2年間愛媛県・市町DX推進専門官(データ利活用担当)として携わった立場から、この取り組みの成果は以下の3点だと考えています。

①自分たちのデータを可視化して比較可能な形にすることで、県・市町の職員の皆さんにデータの力の有効性を知っていただくことができた
②分析も職員の皆さんと一緒に実施することで、データ分析における仮説構築やBIツール活用スキル等を習得していただき人材育成につなげることができた
③経年での比較を可能にするために次年度以降も実施する前提ができるため、今後の県・市町連携の発展に向けて具体的なテーマの1つを提供することができた

また、他の地域でDX推進に取り組む自治体の皆さんにもご活用いただけるようにということで、今回調査に用いた設問一覧も提供できることになりました。
今後、チームえひめ発の取り組みが全国各地のDXの後押しになったらとても嬉しく思います。

最後に、この調査に際し多大なるご協力をいただいた、市町の有志職員による研修計画検討会の皆さま、県・市町のDX担当の皆さま、チーム愛媛DX推進支援センターの皆さま、統括責任者及び専門官の皆さまに深く感謝申し上げます。

愛媛県・市町DX推進会議では、今後も年度に1回を目安に調査を実施し、経時的な変化を計測していく方針です。
 
事前の準備や周知方法などを改善することで回答率の向上を図り、年度間での比較を視野に入れつつ回答しやすい設問数などの検討を重ねてまいります。

愛媛県・市町DX推進会議の最新情報やこれまでの取り組みについては、他のnoteの記事でご紹介しています。ぜひ、ご覧ください。