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いつでも相談できる仲間を 広域コミュニティ醸成への挑戦

こんにちは!
チーム愛媛DX推進支援センター長の渡部久美子です。

今回は「広域コミュニティ活動支援業務」のうち、2023年に開催した広報・マーケティング分野の活動についてご紹介します。

※チーム愛媛DXの「広域コミュニティ活動支援」は、専門官による訪問支援や研修等と同時並行での取り組みです。各市町の横のつながりを強化し、職員の連携によって課題解決できる仕組みを目指しています。

いつでも相談できる仲間を~市町の枠を超えた関係づくり

私たち支援センターはこれまで、

  • 支援ニーズの把握(市町幹部・DX担当・事業課の職員など)

  • 専門官とのマッチング・すり合わせ

  • 訪問支援・助言(オンライン・オフライン)

  • 研修・キャンプの開催

…といった取り組みを進めてきました。

同時に力を入れてきたのが、職員が主体となって継続・推進できる仕組みづくりです。

各市町の職員が「別の市町では今どうしているか相談してみたい」「ほかの方法を試してみたいけれど調べる時間がない」…といった課題に直面したとき、情報やスキルを共有しあえる仲間の存在は心強い支えとなります。

さらに、持続的にアクセスできる環境を整えておくことで、人事異動を経ても貴重な経験や知識を引き継いでいけます。

そこで私たちは2023年度、「広域コミュニティの醸成」が必要なのではとの仮説のもと、3つの分野で交流の場を立ち上げることにしました。

①情報システム分野
②データ利活用分野
③広報・マーケティング分野

ここからは「③広報・マーケティング分野」で立ち上げた広域コミュニティ(=広報・マーケコミュニティ)について、詳しくお伝えしていきます。

※「①情報システム分野」の広域コミュニティについては、こちらの記事↓でもご紹介しています。ぜひご覧ください!

広報・マーケコミュニティが誕生!課題解決に向けて情報をシェア

広報・マーケコミュニティ(担当:藤田専門官)は、市町の情報発信に関わる職員の方々が、組織の枠を超えて交流や情報共有できる関係を目指す場です。現在、約30人の県・市町職員がTeamsの専用チャンネルに参加しています!

さて、「広報」「情報発信」分野のDX推進というと、どのようなイメージが浮かびますか?

広報紙の電子化やSNSの運用など、ともすれば目を引く変化やアクセス数のみ注目されがちですが、本来の広報の姿は「ユーザー本位」「マーケティング」の視点を抜きに語れず、ニーズの把握やターゲットの選定といった工程を着実に積み重ねていかねばなりません。

チーム愛媛DXの「広報・マーケコミュニティ」は、オンライン・オフラインでの情報交換や勉強会を通じ、情報を届けたい相手に、効果的・効率的に届ける方法を考えていきます。

コミュニティづくりの第一歩は、面識のない職員同士でも、気軽にコミュニケーションをとれる関係づくりです。

Teams(限定公開)での自己紹介・情報交換

オフラインの勉強会での交流

このようなステップで心理的安全性を確保しつつ、庁外の職員とも活発に意見を交わしたり、アイデアを提案しあえる横のつながりを目指しています。

なお、このコミュニティでは、情報発信に共通するテーマを広くピックアップしていくため、DX担当者に限らず

  • 移住促進

  • ふるさと納税

  • 観光PR

…といったあらゆる部署からの参加を歓迎しています!

市町を超えての連携はもちろんですが、DX担当者から庁内の別の部署の職員に

「何か課題を抱えていませんか?」
「こんなコミュニティがありますよ!」

とコミュニケーションをとるきっかけにもできるため、実際にさまざまな部署から参加者が集まるようになりました。

第1回目の勉強会は「住民調査データの活用方法」

9月7日には、広報・マーケコミュニティの第1回勉強会を開催しました。

テーマは「住民調査データの活用方法」です。

背景には、これまでの市町ヒアリングで浮かんできた次のような課題があります。

  • 情報を届けたい相手(=ユーザー)への理解が不十分

  • アンケートや住民調査の結果が十分に活用できていない

ユーザー本位の考え方が徹底されない現状は、あまりに惜しい!と言わざるを得ません。

広報やマーケティングの担当者にとって、住民調査データは「宝の山」です。

実践的な手法を学ぶべく、下山専門官(データ利活用)と藤田専門官(広報・マーケ)を講師に迎えてスタートしました。

STEP1 調査設計の事前準備

今回取り組むのは「行政情報を届ける最適な手段を検討する」という架空のプロジェクトです

ある自治体を舞台に「広報誌の全世帯配布を終了する」と仮定し、「住民に情報を届ける」という目的のためにどのような方法が効果的かを考えていきます(=課題)

藤田専門官が特に強調したのは「目的は広報のデジタル化ではありません。住民に情報を届けることです!」ということ。

「ペーパーレス」や「デジタル活用」といった手段を目的化してしまわないよう、注意を呼びかけた上で検討をスタートしました。

まずは分析の対象がどのような人物であるか、具体的に描き出す作業から始めます。

10人の参加者が、

  • 20代男性

  • 30代共働き夫婦

  • 70代夫婦

という3つのチームに分かれ、それぞれ

  • 年収

  • 家族構成

  • よくみるSNS

  • 趣味や特技

  • 将来の夢

…といった分析対象の人物像を想像してペルソナを設定します。

続いて、より具体的な【what】【when】【how】の視点から、効果的に行政情報を届けるための仮説を立てます。

「子育てに役立つ情報について、LINEやX(Twitter)から日常的に得たいのでは?」
「自分から情報を取りに行く習慣がなく、SNSを必要だと感じていないのでは?」

※「仮説」の一例です

住民(=ユーザー)のニーズを徹底して洗い出し、検証するべき仮説が出そろったところで調査設計へとうつります。

STEP2 調査設計・調査データ分析方法

下山専門官による

  • 調査設計の方法

  • クロス集計の方法

  • ピボットテーブルの使い方

等のレクチャーに続き、集計の対象となる項目や手法をチームで話し合い、データ分析を進めていきます。

本来であれば「調査設計」や「調査実施」という工程がここでありますが、今回はある自治体が過去に行った実際のデータを使って、STEP1で立てた仮説の検証に取り組みました。

ほとんどの参加者の方は「ピボットテーブルは触るのも初めて!」という状況でしたが、集計方法を話し合ったり、「年代別のSNS利用者」「スマホを使わない理由」等のクロス集計を進めるうちに、慣れていく様子がうかがえました。

STEP3 分析結果の活用方法

STEP2の分析結果を踏まえ、それぞれのペルソナへの最も効果的な情報発信について考えます。

考察の一部をご紹介すると、

  • 20代のSNSの利用状況について分析→LINEとYouTubeが多い→これらを使ったアプローチが有効

  • 70代女性のスマホを持たない理由を分析→普段から興味のある行政情報を分析→今後もスマホを持つとは考えられず、重要な情報は広報誌で知らせる必要がある

このように、STEP1~3で取り組んだ「仮説・調査・分析」から意思決定の根拠となるデータが導かれることを体感しました。

広域コミュニティ醸成の支援はこれからも続きます!

勉強会の参加者からは、

「広報に関する住民アンケートを実施するので、調査設計に生かしたい」
「意思決定が必要な場面では、根拠となるデータの収集に力を入れたい」

などの感想が寄せられました。

広域コミュニティではその後もTeamsでの交流や情報交換が続いており、第2回・第3回の勉強会も企画。コピーライター・田村大輔さんを招いての「街のビジョンを実現するための事業や業務の「スローガン」設定方法」や、雑誌・danchuの植野広⽣編集長をゲストとする「食をテーマに学ぶ、DXに必要な「編集力」 」を開催しました。

私たちは、これからも【広報・マーケ分野】のほかにも【情報システム分野】や【データ利活用分野】の広域コミュニティ醸成の活動に挑戦していきます!

私の自論ですが、コミュニティは「生物(なまもの)」だと考えます。
人の心があり、人と人との人間関係や信頼関係があり、人々のエネルギーが掛け合わされることによって、生き続けるのがコミュニティだと考えております。

今年度は「醸成」への挑戦ですが、この挑戦の中で経験したことや学んだことを活かしながら価値づくりをしていきます。

🌻チーム愛媛DX推進支援センター長 渡部久美子